ドールを遠巻きに眺めていた頃

はじめて:

スーパードルフィーの存在はだいぶ昔から知ってました。
初めて実物を見たのは、秋葉原の旧ラジオ会館にあったボークスです。

はじめてあの販売コーナー(天使のすみか)を覗いたとき、まるで異世界かどこかの美術館に足を踏み入れてしまったような気持ち。
当時はまさか自分が手に入れることになるなんて、夢にも思いませんでした。
なんだか、男子禁制のような雰囲気で、落ち着いて見ていられませんでした。

人形の顔なんてろくに覚えていないくらいに。

 

2度目:

きらびやかに、優雅に、ケースの中に展示されている人形。

初めて見る異質さ。だけど、繊細で、かわいい。
瞳がすごい。まるで生きているかのようなリアルなグラスアイ。自分で選んで入れるんだ……。
こちらを見つめられているようで、ちょっと怖くて、引き込まれそう。

モデルもいろいろあるんだな、なんて眺めてまわっているうちに、ちょっと落ち着いて見る余裕ができてきて、好みなタイプのかわいい子が目に止まりました。
この子、すごく儚い感じでかわいい。

いくらするんだろう。

……値札を見て……

……超びっくり!

めっちゃめちゃお高い!

……これはちょっとした覚悟と準備がないと買えないぞ……。

それに、本体だけじゃなくて、いろいろ揃えないといけないんだよね?瞳とか、ウィッグとか、ドレスとか??なんか色々細かいもの売ってるし。
ワンセット揃えるのにいったいどれだけかかるんだろうか。

ということで、あっさりと諦めたのでした。

 

3度目:

ボークスに行ったついでに覗くことはあったけれど、趣味としては遠い存在になっていました。
だって、お高いんだもの。
中途半端な気持ちで始めたら、無駄になっちゃうかもしれない。
本当にずっと可愛がれるかどうかも、わからないし。
それに自宅のどこに置いたらいいのかもわからないし。保管はどうしたらいいのか、どこかに持って行って遊んだりするものなのか、それとも動かさないで眺めるものなのか、何もかも分からないのです。

ショールームの奥まったところにある、草木で飾り付けられた特別な空間。
スペシャルなお客様のためのスペースであることは一目瞭然です。
白い……何もかも白い……壁も天井も床も白い……人形も白い……。
そこにいる自分が汚らわしく思える……。

展示されている人形は、参考展示品なのでしょうか。それとも販売されているものなのでしょうか。
買うつもりもないのに店員さんに話しかけて聞くのはとても勇気が必要です。わたくしチキンです。

「いますぐお迎えできます」というカードのついたコルクボードがありました。
なるほど、ここに掲載されているタイプの人形は、すぐに購入できるのか……。高いけど。
こんな高いお金を出して人形を買えるなんてきっと、お金持ちの人たちなんだろうなあ。なんて思っていました。
ある意味、間違っていなかったのですが。

コソコソと人目を気にしながらショーケースを覗いては、グラスアイの透明感やウィッグの光沢や精緻なドレスのつくりに目を奪われました。
こんなに美しいものを1体ぶん揃えるのはさぞかし大変なんだろうなあ。
さっきのコルクボードに書いてあった金額は、本体だけなんだろうか、それとも、すべてセットになっているのだろうか。

やはり、半端な気持ちでこの趣味はできないだろう。

夫婦で「すごいね」「かわいいね」「見て見て、これすごく綺麗」なんて言いながら、「でも高いんだねえ」なんて話を何度かした記憶があります。

なんだか部外者の自分はそこに居てはいけないような気がしたものです。

 

4度目以降:

何度か足を運ぶうちに、お店に置いてあるドールはどんどん進化している(?)ことに気が付きました。以前見たタイプの人形が見当たらない。
そうか、様々な形の人形があって、好きなグラスアイをはめて、ウィッグを選んで、自分だけのドールができるのか…なるほど。
いったいどれだけのタイプがあるのか、気になりました。

塗装(メイク)されていないドールを見分けるのはとても難しかったし、価格の差がいったいどこにあるのかもわかりませんでした。いったい何種類のパーツがあって、どんな規格になっていて、何種類の造形があって、何を揃えればいいのか……すごく深そう。

この時点で、ドールがだいぶ気になる存在になっていたのでしょう。

 

それから:

2008年頃でしょうか。

船橋のボークスで妻が突然、「実はSDの購入に興味がある」と漏らしました。
僕が買いたいなんて言い出したら真っ先に反対されると思っていたので、かなり意外でした。

妻のその一言で、この趣味がググッと近づいてきたのです。
えっ?もしかして、可愛い子を見つけて、家に持って帰ったりしちゃう?そんなことができちゃう?
すごくドキドキしました。

ぬいぐるみとか好きだけどあまり人に言わないし、人形なんて男が持っているなんて絶対誰にも言えないって思ったんです。
それに加えて、口を開かずともゆらゆらと感じる繊細な美しさ。こんなものを、アラフォーのおじさんが購入してしまってよいのでしょうか。
お店の人に、変に思われたりしないんでしょうか。
この不安な感じが、すごい背徳感を醸しだします。

忘れもしない2012年5月4日、運命の日です。

 

運命の日

実際ドールが欲しくても、気に入ったタイプが定まらなければ購入まで踏み切ることはできません。
高いものだし、妥協して後悔はしたくない。どんなモデルがあるかなんて全然知らないけど、一期一会だ、そう考えていました。
しかしやはり値段がネックで、なかなか「買います」とは言い出せない。

そんなこんなで時間も経ったあるとき、妻が「デッサン人形が欲しい」というので、ボークスに買いに行きました。
しかし店を出た時に手にしていたのはデッサン人形ではなく、本物のお人形さんでした……。

そう、運命は突然にやってくるのです。

ボークスを訪れる。
奥にあるお人形さんコーナーに行く。
何度も繰り返したパターンです。
どんなドールがいるのか、興味本位で眺めます。
前述のように「かわいいな……」とため息をつくような子は過去にも何度か出会ったことがありますが、やはり高額すぎて手を出す気になれませんでした。

その日も、いつものように「このコかわいいねー」「このドレス凄い!見て見て!」とか他愛もなくやっていたのです。

ところが……

……店内奥のショーケースを覗きこんだ瞬間……

……そこにある人形と目が合ったとたん……

……脳天から爪先まで、電気が走りました。

淡い花柄の可愛い若草色のワンピースを身に着けて、さりげなく、切なく、斜め上を見上げるその表情に、釘付けになってしまいました。

こんなに可愛いドールがいるんだ……。

この感覚、なんだろう。初めての感覚で、よくわからない。

かっこいいスポーツカーを見たときに感覚に近いかもしれません。でもちょっと違う。

恋でもない、萌えでもない、なんだこれ。

とにかく、一瞬にしてその子の虜になってしまったのです。

ああ……このドールを他人の手に渡してしまいたくない!今すぐに、自分のものにしたい!
そんな衝動に駆られました。

ちょっとまって!すっごいお金かかっちゃうんだよ!いろいろ揃えていったら、フィギュアやぬいぐるみなんて比較にならないんだよ!

でも!いまこの子を連れて帰らなかったら、誰かのものになってしまう!

しばらくの間、ぐるぐると同じようなことを繰り返し考えて、店内をウロウロしていました。

当然、店員さんから声をかけられることになります。

店員さんから溢れ出る情報の渦に飲み込まれながら、もうこれは運命であると理解したのでした。

あとは、財務省の許可を得るというハードルが……。

 

決断

幸せなことにその日、夫婦でドールを購入しました。お迎えというそうです。

妻はSDマークのスタンダードモデルを選びました。しばらく前から気になっていたそうです。

うずらに電撃を浴びせかけた人形は「ワンオフモデル」というもので、お披露目期間という展示期間が終了するまで連れて帰れないらしいのです。撮影もできないんだそうです。この気持ち!どこにぶつけたらいいの!2週間も我慢しなくてはいけないの!

姿を見たかったらお店に見に行くしかありません。
見に行けない間はもう想像力フル回転するしかありません。

あれ?人形って名前とか付けるものだっけ?付けちゃっていいのなら、考えないと。
いろいろ準備しなきゃ。
ネットで調べまくりです。

同じタイプの似たような子を画像検索しても、なかなかいませんね。

 

▼妻がお迎えしたSDスタンダード少年「マーク」(服がないので女装しています)

201205090533.jpg

 

命名

いろいろ悩んだ挙句、名前は「花」になりました。 結構気に入ってます。

スペックいろいろ書いてあったんですけど、覚えているのはヘッドが「教室B」で、メイクアップは k.mayura さんで、髪型はゆるいおさげ。左右に分けて肩のあたりからリボンを巻き込んだ三つ編みになってる形で、目は造形村のなんとかってやつで、ドレスは若草色で、小さい帽子をピン止めで頭にとめていて、レースのオーバーニーソックスと、白い厚底の靴をはいていました。

 

感想

2体もお迎えすることになり、2千円のデッサン人形が突然数十倍になってしまいましたが、後悔はまったくありません。

あの初めて訪れた天使のすみかの神秘的な感じ。ショーケースに飾られた人形たちの美しさ。

いつまでも忘れたくないです。

あの子が我が家に来ると思うと、ほんとに、ほんとに、楽しみです。

お迎え予定は、5月14日です。

スーパードルフィーとの出会い

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